薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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2025年9月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

内緒の話


 その日は9月の半ばにしてはやけに暑い日だった。
 津美紀と暮らしていたオンボロの安アパートじゃクーラーなんてものはなくて、学校から帰って一番にすることと言ったら窓を開け放して扇風機を回すこと。その日、津美紀は委員会で少し帰りが遅く、俺が先に帰っていつ壊れてもおかしくない扇風機を回して籠った熱気が薄まるのを待っていた。蝉の鳴き声はもうしない、静かで暑い日。
「あれ、津美紀は?」
「…ノック」
「それ言うならちゃんと鍵閉めな」
 インターホンなんてものもなかったあのアパートで来客を知らせるものといったらノックしかなかったが、五条さんはいつも無断で入ってくる。合鍵を持っているから俺が鍵を閉めたって意味なんてないのだけど、帰宅して一番に鍵を閉めなかったのは自分なので黙った。
「んで、津美紀どうしたの?」
「委員会。少し帰り遅くなるって」
「へぇ、子供でも仕事なんて大変だねぇ」
「ていうか、何しにきたんですか」
「息抜き。疲れたの」
 言うなり人の家の床に寝そべった五条さんは「津美紀帰ってきたら起こして」と言い残してサングラスを外した。それをちゃぶ台の上に適当に放り投げて、目を閉じて寝る体勢に入るもんだから邪魔だとどかそうとしたけれど小さかった俺じゃ大きな五条さんの身体はびくともしなかった。たまに意味もなく俺たちの暮らす家にやってきては、稽古や任務に連れて行くでもなくただ構い倒して帰っていく。数時間もしないで帰る時もあれば1泊していく時もあって、多分幼い頃の俺と津美紀にとってこの頃の五条さんは凄い人だとかそんなイメージはあまりなかった。
 この日も例に漏れず意味もなくやってきた五条さんは本当に疲れていたようで、広くもないアパートの一室で遠慮なく足を伸ばして寝始めた。布団もクッションも何も無い、ただの畳の上で寝こける五条さんに、俺は内心緊張していた。
 少し前に五条さんが半年くらい家に来なかった時期があった。お金だけは五条さんと一緒に仕事をしているという疲れた顔をした男の人が持ってきてくれたけれど、姿はとんと見えなくなって連絡も途絶えた。お金を持ってきてくれる人に聞いてみても仕事が立て込んでいるとしか教えてくれなくて、最初は本当に忙しいんだなと納得していたけれど半年も経つ頃にはまた捨てられたのだと気持ちに整理をつけ始めていた。が、急に人の家にやってきた五条さんは本当に忙しすぎて顔を見せれなかっただけらしく、海外に行ってただとか寝る暇もなかっただとか半年分の苦労を語るだけ語った末に俺にこう言った。
「ごめんって、捨てたりしないからむくれないでよ」
 この出来事が、たぶん、俺の恋の気付きというやつだ。捨てられたのが悲しくて、本当は一緒にいたくて、会えたのが嬉しくて、そういう気持ちはきっと恋の中にある。そんな気付きから少しして津美紀が少女漫画にハマって、自分がドキドキしたシーンなんかを見せてくるから余計に俺の中では恋というものの存在が大きくなっていた。この頃はたぶんまだ恋はきらきらしたものだと漫画から刷り込まれていた。それから恋なんて捨てたくなるようになるのは別の話だし、その捨てたい恋が報われるのも一先ず別の話だ。
 そんなわけで恋に気付いてしまった俺は、目の前で寝こける五条さんにどきどきしていた。津美紀が読んでいた漫画で見たキスというものが頭をよぎって、それが好き合っている人間同士がするものだとは分かっていても好奇心と初めての恋に浮かれる気持ちとは無敵なもので。
「………寝てる」
 ちょん、と五条さんの頬をつついてみても綺麗に閉じられた瞼はぴくりとも動かない。思い切って揺すってみても起きる気配はなくて、扇風機の音すら聞こえないほど心臓がうるさく鳴り始める。
 五条さんの顔の横で小さく身体を丸めて、全身の血がお湯になったんじゃないかってくらい熱くて、ゆっくり近づいて、ちょん、と触れた唇は柔らかかった。
 時間にして1秒に満たないくらい。慌てて離れたけれど、五条さんはそのまま起きる気配はなかった。実は起きてたらどうしようだとか、どこかでバレたらどうしようだとか、色んなことが頭をよぎって、その日の晩御飯は味がしなかった。

「…ねぇ、ちゅーすんなら起きてる時にしてよ」
「起きてたんですか」
 眉間に皺を寄せて瞼を持ち上げた五条さんはむくれたように口を尖らせた。どうやらずっと起きていたらしい。布団の中でもぞもぞと動いて向き直った五条さんが、俺の頬に手を寄せる。今度は起きてる状態の五条さんにしろということか。
「この間も寝てる僕にしてたでしょ」
「しましたね」
「起きてる時にしてよ」
「…善処します」
 善処じゃなくってさぁ!と騒ぎそうな口にちょんと自分の唇を触れさせて黙らせる。この間もなにも、実は寝てる五条さんに遭遇する度に毎回しているのだが、バレるかバレないかは半々というところだ。6日前にソファで寝落ちていた五条さんにしたのはバレていないらしい。
 趣味、というわけではないが寝てる五条さんにキスをするのは密かな楽しみというか、初心に戻れるというか、なんにせよ気に入っているのだ。普段はうるさかったりいじわるだったりいやらしかったりする五条さんの唇は、寝てる間はただ柔らかいだけ。その柔らかさに昔みたいにどきどきするのは、五条さんにはずっと内緒の別の話だ。

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スイートポテトが食べたい
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小説より奇なり


 子供が小さくて弱くて脆い生き物だというのは分かっていた。けれどそれは知識として理解しているだけで、実体験としては理解していなかった。
 子供の平均的な体型なんて知らないけれど、それでもまともな食事が取れていない故の細っこい身体。骨と皮だけ、とまでは言わないけれどちょっと強く掴んだら簡単に折れちゃいそうなくらい脆く見えた。実際その脆さは思っていた通りで、連れて行った任務で恵の腕をぽっきり折ってしまった時に硝子にこっぴどく叱られながら意識を改めたものだった。子供って手がかかって(今思えば恵も津美紀も子供にしては聞き分けが良すぎて手なんてまるでかからなかったのだけど)気を遣う。めんどくさいな、なんて思ったりもしていた。それでも誰かに恵のことを任せたくなかったのは、知らぬ間に僕の中で恵の存在がその辺の適当な人たちとは違う場所に居たからだ。平たく言っちゃえば大事になってたってこと。
「…鼻歌ウザイんすけど」
「子供の成長を喜んでんのよ」
「はぁ…」
 そんな細くて貧弱で簡単に死んじゃいそうな子供は、今はすくすくと育って体重も増え、僕にはボコボコにされるけど簡単には死なないようになり、ついでにちょっとふてぶてしくなった。ノリのいい鼻歌に文句を言いながらも、僕が恵の手を離さないのには文句言わないんだよね。昔は恵の手なんて本当に小さくて、片手で両方掴めるとかじゃなくて片手で両方握り潰せそうなくらい小さな豆粒サイズだった。それが今やしっかり繋ぎ返して指まで絡めてくるサイズ感だ。
「そういえば明日」
「ん?」
「……スーツとか、ちゃんとした格好した方がいいですかね、やっぱ」
 子供の成長は早いなんて言うけれど、実のところ変わったのは見た目だけじゃなくて関係も。出会った頃はまさか指を絡めて手を繋ぐような仲になるなんて思ってもみなかったし、恵のお姉さんに僕たちの関係を報告する日がくるとも思ってなかった。
 明日、僕と恵は津美紀に「実は付き合ってます」の報告をしに行く。今日はその前乗りで、2人揃って任務をお休みして津美紀の家の近くに宿を取ったのだ。そしてその宿に向かう道中ってわけ。お互い多忙で、直前まで仕事だったから宿に向かうのも月が顔を出す時間になってしまった。
 恵が高専を卒業すると同時に2人で暮らし始めるのかと思いきや、津美紀にNOを突きつけられて恵と津美紀は別々に暮らしている。なんとなく、その時点で津美紀は何かを察している気がするけれど、恵には黙っている。びっくりしすぎて固まる恵は見たいしね。
「別にいつも通りでいいんじゃないの?そこまでかしこまるような場じゃないし。てか、お互い任務から直で来てんだからスーツなんて持ってきてないじゃん」
「…そこはほら、五条さんが買ってくれるんじゃないかと」
「現地調達で?」
 そうです、と当然の顔をして頷くもんだから「お前ってさぁ!」と笑って思わずおでこを小突く。スーツくらい欲しいんならいくらでも買ってあげるけれど、当然みたいな顔しちゃって。といってもそうやって育てたのは他でもない僕だけど。
「でもほんと、スーツとかいらないよ。そのまんまの僕たちでいつも通りに過ごしてさ、付き合ってますって言おうよ。いつからってのは…まぁ、ぼかそう」
「叱られますからね」
 小さく笑って恵が僕と繋いだままの手をゆらゆらと揺らした。
 あんなに小さかった手が、今じゃ絶対離したくない大事な手になってるんだから人生ってのは小説より奇なりってやつだ。

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今年はサンマがでっかい!!!!!!!!嬉しい!!!!!!!!!!!

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そりゃ浮かれるというもの
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今日はポイント3倍デー 都合よく生きてて成人して平和に同棲してる
自カプを数字で

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めせん
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夏の風物詩
これの続きぽくなった


 今や日本の夏はエアコンなしでは過ごせない。窓を開けて扇風機、風鈴の音で涼を感じるなんて時代は既に過去だ。毎年熱中症で運ばれる人は後を絶たず、亡くなる人も多い。連日テレビじゃ暑さ対策をするように呼びかけている。だから休みの日にエアコンの効いた部屋で過ごすのは当然の話なのだ。
 なのだけれど、適温というのは人それぞれだ。
「めぇぐみぃ」
「っさい、何度呼ばれても出ません」
 僕がいるじゃんかぁ、と不満げな声が頭上から聞こえるが全て無視して布団の中で更に丸くなる。適温は人それぞれだが、夏場の五条さんの家は極寒だ。玄関を開けた瞬間からひんやりとした空気に歓迎され、10分も過ごせば熱の籠もった身体が肌寒さを覚え、1時間も過ごす頃には冷たい麦茶ではなく暖かい緑茶が欲しくなる。そうして一晩過ごせばもう布団から出てこれなくなる。少なくとも俺はそうだ。これが適温の人がいるのは分かっているが、俺には寒すぎる。
「僕があっためてあげるって言ってんじゃん」
「いらない。それよりエアコンの温度上げてください」
「夏は冷え冷えの部屋で毛布に包まりながらアイス食べるのが最高なんじゃん!」
「1人でどうぞ。……って、ちょっと!」
 いつまで経っても布団から出てこない俺に痺れを切らした五条さんが、ベッドに乗り上げてきたと思ったら頭から被っていた布団を剥ぎ取られる。途端にひんやりした空気が肌を撫でて鳥肌が立った。寒さから逃げるように身体を縮こまらせると、当然のように隣に寝転んできた五条さんが後ろから腕を回すようにして抱き締めてくる。元々の子供体温か、それとも筋肉量の差か、いつも暖かい五条さんの身体はこんなに極寒の部屋でも変わらず暖かった。真夏にも関わらず寒さに震えて人の温もりに心地良さを感じるなんて。
「あーもう…毎年こんなやりとししてんの不毛すぎる…」
「いい加減諦めなって。夏の風物詩ってやつだよ」
「俺を寒い部屋に放り込むのが?」
「寒い部屋で凍えてる恵を抱き枕にして、アイスを食べるのが」
 毛布はどこに行ったんだ。と思ったが、五条さんはこの部屋の温度なんて大して苦じゃないのだ。長袖のシャツを着ている俺に対して半袖短パンで過ごしているのだから。五条さんが毛布代わりとなって冷え冷えの部屋で凍える俺を抱えながら食べるアイスが美味い、ということだ。
 実をいうとこのやり取りは毎年恒例で、真夏に五条さんのところに泊まると一度はしている定番の押し問答なのだ。最初は扇風機と百円均一の店で買ってきた安い風鈴1つで夏を乗り切っていた俺たち姉弟を見かねて、五条さんがエアコンを買ってきてくれたところから始まり、ある程度の歳になればエアコンを使うのにだってお金がかかることを理解し、必要最低限しか使っていなかった俺たちを更に見かねて「夏といえばクーラーがんがんに効いた部屋でアイス!」と言い出し、それが更に歳を重ねて関係が少し変わったあとも続いている。確かにひんやりした部屋で3人で毛布にくるまりながら食べたアイスは美味しかった。けれどそれももう昔の話。少なくとも今の俺は過ごしやすい温度に整えられた部屋で凍えることも汗もかくこともせずに本を読む方が好きだ。ひんやりしていてもいいが、限度がある。
「段々エスカレートしてません?今年はまじで寒すぎ」
「そう?ちょっとやり過ぎたかな」
「せめて俺が過ごせるくらいにしてくださいよ」
「ん。また来年もこうしてアイス食べようね」
 嫌だとも分かったとも返事を返さなかったが、俺の返答は五条さんには筒抜けだろう。
 その後アイスを持ってくるのを忘れた五条さんが寝室から出て行った時に、こっそりエアコンのリモコンを手に取ったら設定温度が18度になっていて思わず冷房を切った。

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行ってきますのちゅーはない訳〜???
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確信犯と横着者


 桃の上部に軽く十字の切り込みを入れ、沸騰した湯に入れる。切り込みを入れた部分の皮が浮いてきたら取り出し氷水につける。そうしたら後は皮をそのまま剥くだけ。
 つるんと引っ掛かることなく皮が剥けて、思わず小さな感動を覚える。スマホで調べたら一番上に出てきた記事を元にやってみたのだが、これがなかなか上手くいった。伏黒はちょっとした達成感と共に湯剥きした桃を一つずつ皿にのせてリビングで待つ五条の元へと向かった。
「桃剥けましたよ」
「ありがとぉ~…てなにこれ。切ってないじゃん」
「面倒くさくて」
 手がべちゃべちゃになるじゃん!と文句を言うが、桃を持ってきて食べたいから剥いてと押しつけてきたのは五条だ。夕食後のデザートに一人一つ丸のままの桃とは贅沢だが、それはそれ。どんな形で用意されても文句を言われる覚えはない。伏黒は五条の文句を聞き流して自分の分の桃を手に取った。冷水で冷えた桃は瑞々しく、伏黒の指先を濡らす。確かに手は汚れるけれど、今日はもう風呂に入って寝るだけ。気にすることなく齧り付こうとした時だった。
「よし、横着者の恵を次からは絶対切り分けたくさせたげる」
「は?」
「ちゃんと見ててね」
 言うなり桃を手に取った五条は大きく果肉に齧り付いた。溢れた果汁が指先を伝い、手のひらから零れて腕に細い線を描く。それがテーブルに零れる前に大きな舌でべろりと舐めあげた。伏黒の目を、真っ直ぐ射貫きながら。
 じゅうと音を立てて果汁を吸い、齧り付き、舐めあげるその動きは間違いなく伏黒を意識していた。肉厚な唇が桃に触れて捲れ上がり、ちらちらと白い歯と真っ赤な舌が覗く。じゅると音を立てて伏黒の舌を吸い上げ、身体に齧り付き、舐めあげる。その時と同じ、湿度感。
「っ、性格、悪いですよ」
「何が?」
「…そこまで不満なら、自分で用意したらよかったじゃないですか」
「不満っていうか、適当でももう少し食べやすく出してくれると思ってたって感じ。ほら、最後までちゃんと見て」
 種を残して全てを食べきった五条が手のひらから指先まで丁寧に果汁を舐め取っていく。その動きだって、嫌な意味を含ませている。伏黒が汚してしまった指を、見せつけるように綺麗にするのと同じ動き。
 結局、五条が食べ終わるまで伏黒は一口も食べられなかった。見てと言われたとおりに馬鹿正直に見てしまって、冷水で冷やされていた筈の桃はすっかり温くなっていて、表面も色が変わり始めている。肘まで伝った果汁がテーブルに一つだけ点を描いていた。
「次はちゃんと一緒に食べられるように切ろうね」
「…最悪」
「っははは!じゃあ僕は先にお風呂入ってくるから、恵はゆっくり食べててね」
 あ、恵がお風呂からあがる時にはバスタオルも一緒にベッドに持ってきて。そう告げて五条は種だけになった皿を持ってキッチンに消えていった。
 桃にゆっくり齧り付けば、温いはずのそれがひんやりと心地いいくらいだった。

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誰にも分からない白髪判別法
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麦茶といたずら


 年々夏は厳しくなっている。窓を開けて扇風機を回して冷たい麦茶でも飲めば夏を感じられたのは昔の話で、今や突き刺さる日差しから逃げるようにクーラーの効いた部屋に籠るのが今の夏だ。しかし、それだけ暑くとも授業はあるし、任務だって外を駆け回る。蝉の鳴き声を背に、今日も教え子たちはグラウンドで稽古に勤しんでいる。山の中にある分、街中よりは幾分マシな暑さだろうが、それでも暑いことには変わりない。
 生徒たちへの差し入れとして自販機で適当に飲み物をまとめて買った五条は、グラウンドへと向かいながら毎年この時期になると体調を崩しがちな伏黒のことを思い出した。幼い頃から夏の日差しと湿気が苦手で、食欲が減っては夏風邪を引きやすくなるのだ。五条も忙しい身、そう頻繁に様子を見に行けたわけではなかったが、クーラーもないあのアパートに顔を出すときは決まってアイスをお土産にしていた。開け放した窓から入り込む蝉の鳴き声と、扇風機が送る温い風に当たりながら冷蔵庫で冷えた麦茶と一緒にアイスを食べる。もうすっかり懐かしいものになってしまった夏の思い出だ。
痛いくらいの日差しが差し込む廊下を歩きながらグラウンドの方を見れば、隅っこの方に座っているのが一人。どれだけ離れていたって分かる。伏黒だ。眩しいのか少し目を細めてじっと稽古を続けている虎杖たちを眺めていた。その顔がいつもより少し白い。
 足早に廊下を進み、一歩外へと踏み出せば一気に汗が滲む。なるべく気配を消して伏黒の背後に回った五条は手に持っていたペットボトルを持ち上げた。
「サボり?」
「っ、…な、にすんですか」
 結露で水滴が滴るそれを急に頬に当てられて大きく伏黒の身体が揺れる。犯人の目星はすぐについたのか、五条を見上げる目に苛立ちはない。
「差し入れ持ってきたんだけど、サボってる子がいたからちょっといたずら」
「サボりじゃなくて休憩してたんですよ。すぐ戻ります」
 頬に当てられたペットボトルをそのまま受け取って、今度は首筋に当てた伏黒が小さく息をつく。額から流れた汗が頬を伝って首筋へと消えていく。その横顔はやはり覇気がない。
「相変わらず夏に弱いね」
「…んなことないです」
「ま、そういうことにしといてあげるけどさ。悠仁達に心配させたくないんなら、ちゃんとご飯食べて水分とりなよ」
「飯くらい、ちゃんと食べてます」
 分かりやすく顔を顰めた伏黒の頭を軽く小突いて、未だ保冷剤代わりにしているペットボトルを取り上げる。キャップを捻って差し出せば、何か言いたそうな顔で渋々受け取った。人に心配されたくなくてすぐ隠そうとする。隠すのだけは上手い伏黒のことだ、五条が来なかったらこの稽古が終わって自室に帰るなり夕食を食べるのも忘れてベッドで寝落ちるだろう。
「はいはい、ちゃんと食べてるってことにしとくから飲んどきな」
「…はい」
 夏が苦手な伏黒は、冷たい麦茶だけはよく飲んだのだった。

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お酒飲んでねむねむちゃん
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KING OF PRISM-Your Endless Call-み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ-
大絶賛公開中!
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五伏☀️🍉🌻🏊
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