薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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それって結構愛じゃない?
無下限のことふわふわ認識で書いてる

 五条は何かと伏黒の手を触るのが好きだ。一回り以上大きな手に簡単に包み込まれては、ただ体温を分け合うだけの時もあるし、やたらと形をなぞるように触れられる時もあるし、いやらしい触り方をして反応を楽しまれる時もある。冬場になるとこの触れ合いにハンドクリームが加わったりもするのだが、それはまた別の話。
「思ったんですけど」
「ん?」
 下から掬い上げる様に伏黒の両手を包み込んだ五条に甲を撫でられながら不意に気付く。今五条はなんてことないように親指で人の手の甲をなぞってはいるが、その感触は確かに伝わってくるのだ。伏黒が以前聞いた話だと、五条自身の術式により限りなく近付くことは可能だが触れることはできない、と言っていた気がする。五条の間には無限があるのだと。といってもその術式対象は自動的に選別されて全部が全部弾かれる訳では無いらしいのだが。
 だから伏黒は五条の術式対象外なのだと言われてしまえばそれまでではあるのだが、しかし出会ってからというものただの1度も伏黒はその無限とやらに弾かれたことがない。出会った日から今日まで、ずっと。五条の無茶な要求にふざけるなと手を上げたって、それはちゃんと当たるのだ。正しくは当たるのではなく受け止められてしまうのだが、それもまた別の話だ。
「1度も五条さんの無限とやらに弾かれたことがないな、と」
「だって恵は僕に危害加えないでしょ?」
「でも、お互いのこと全く知らない初対面からずっとこうでしたよ」
「そうだっけ?」
「はい」
 そもそも人間相手には発動しないのかもしれないが、五条は意外にも伏黒の言葉に僅かに目を丸くした。それから不思議そうに首を捻る。
「大体の人はすぐに対象外になるとはいえ、一応完全初対面には発動するんだけどなぁ」
「術式切ってたとか?」
「まさか!」
 今度は伏黒の手を軽く握りしめたり緩めたりを繰り返す。すっかり五条の体温でぬるくなった手のひらが好き勝手されるのを眺めながら初めて会った日のことを思い出す。
 夕陽が綺麗な日で、そのオレンジで染まった空間に立つ全身真っ黒な五条は幼い伏黒が警戒するには十分だった。あの頃は大人なんて信用していなかったし、向けた視線にだってそういう感情が滲んでいた筈だが五条の手のひらは確かに伏黒の頭を撫でてみせた。どう見ても怪しくて信用のしようもなかったのに、その手のひらが意外と優しかったのはよく覚えている。あの日から、五条に触れて体温を感じなかった日がない。
「…っふふ、なるほど」
 暫く唸っていたかと思ったら不意に五条が笑う。包み込まれていた手が今度は指と指を絡めるように繋がれて、ちょっとやそっとじゃ離れないように力が込められる。
「それって実は結構愛じゃない?」
「…?」
「初めて会った日から、僕は恵のことを好きになるって決まってたってことだよ。頭で考えるよりも、無意識に、勝手に」
 すっかり絡め取られてしまった両手は伏黒の意思では離すことはできなくて、嬉しそうに笑う五条の好きにさせることしかできない。
「顔、真っ赤じゃん」
「…恥ずかしいこと、言うから」
「でも本当のことだよ。それにそう思った方が素敵じゃん」
 確かにぴたりとくっついた手のひらからも、甲をなぞる指先からも五条の温もりが伝わってお互いの間に無限の距離なんて感じやしなかった。今も昔も変わらず。

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