薄明
ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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誘い下手
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今日は朝から仕事で、帰ってきたのは今さっき。時計の針は夜の9時を指していて、出張が多い身としては日帰り出来ただけでも良しとするべきか。幸い明日は休みで、急に仕事が入らなければ一応丸1日暇なはずだった。その暇が終わればやっぱりまたあちこちに駆り出されるのだけど。
「明日って恵も暇だっけ」
最近何かと忙しくて伏黒の予定を聞くのも忘れていたのを思い出す。もしも時間があるようなら少しくらいは顔を見たいのだけど、伏黒もそれなりに忙しい身だ。何となく授業以外で顔を合わせる機会もなくて、連絡を取り合う暇も大してなくて、ずるずると今日になってしまった。こんなことなら次からはスケジュール共有アプリでも入れようか、なんて事を考えながら五条はスマートフォンを開いた。
あまり会話の更新されていないメッセージアプリを開いて、明日の予定を聞く内容を打ち込んでいく。それを送信しようとした時だった。
「えっ?」
勝手に部屋のドアが開いたと思ったら、丁度今メッセージを送ろうとしていた本人がいた。高専の敷地内にお互いの住んでいる場所はあるから来ようと思えばいつでも来れる、連絡する手間も省けた。それでも五条が目を丸くしたのはそのままずかずかと部屋に上がってきた伏黒の勢いにだった。
「え、なになに」
玄関から一直線に五条がいるリビングまで来たのだろう伏黒は、戸惑う五条を気にもしないで隣に腰を下ろす。その勢いにソファのスプリングが軋んだ音を立てた。
一体なんだと思っている間に今度は手を掴まれて、まさか持ってきたのか爪やすりで一つ一つ爪先を整えられる。
テレビもついてない部屋でお互い無言になると爪が削られる音だけが響いてシュールな空間だった。さりさりと丁寧に整えていく伏黒はやっぱり何も言わなくて、黙々と五条の爪先だけを見つめている。
「……あの、さ」
その伏黒の頭頂部をじっと見ていれば意図に気がつくというもので。五条の指先がどうしていつも深爪気味で、しかもちゃんと丸く整えられているのか。その理由といったら伏黒しかいない。伏黒だってその理由をちゃんと知っているはずだ。本当は五条の指先は今も特に整える必要はないのだが、それでもこうして伏黒自らやってくるということは、つまりはそういうことに違いない。五条の短く整えられた爪先はそういう意味を含んでいる。
「…明日、休みって聞きました」
「そう、だね」
「風呂、自分の部屋で入ってきました」
「どうりで肌がしっとりしてるわけだ」
掴まれていない方の手で薄らと赤く色付いた項の辺りに触れれば、そこはいやに暖かくて水分を含んでいた。項から後頭部へと手を滑らせたら髪だって少し湿っていた。ここまでされて分からない程付き合いは浅くないし、鈍くもないし、その気にならないわけもなく。
器用なわりに変なところは不器用だとは思っていたけれど、こういうことは苦手だとは思っていたけれど、そもそも伏黒から来るとは思ってもなかったけれど、それにしたって。
「……誘い方下手すぎない?」
気付いてしまえば突飛な行動が途端に可愛く見えてくる。一応伏黒もそういう気分になる男の子だと分かって嬉しいやら、わざわざ部屋から爪やすりを握り締めてここまでやってきたのかと思うと可愛いやら、最低限の準備はしてきたくせに五条とそういうことをしたいのだと口に出せないところが愛しいやら。
相変わらず人の指先を見つめたままの伏黒の顔を覗き込めば、やりにくいと押し退けられてしまった。押し退ける手のひらが熱くて、一瞬見えた頬は真っ赤で、丸見えの耳も真っ赤だった。
これは今夜は頑張らないとだな、なんて思って笑いを噛み殺せば肩が揺れて五条が笑ったことに気がついたのか、照れ隠しに「やりにくい」とまた叱られてしまった。
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2023.09.07 14:49:08
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今日は朝から仕事で、帰ってきたのは今さっき。時計の針は夜の9時を指していて、出張が多い身としては日帰り出来ただけでも良しとするべきか。幸い明日は休みで、急に仕事が入らなければ一応丸1日暇なはずだった。その暇が終わればやっぱりまたあちこちに駆り出されるのだけど。
「明日って恵も暇だっけ」
最近何かと忙しくて伏黒の予定を聞くのも忘れていたのを思い出す。もしも時間があるようなら少しくらいは顔を見たいのだけど、伏黒もそれなりに忙しい身だ。何となく授業以外で顔を合わせる機会もなくて、連絡を取り合う暇も大してなくて、ずるずると今日になってしまった。こんなことなら次からはスケジュール共有アプリでも入れようか、なんて事を考えながら五条はスマートフォンを開いた。
あまり会話の更新されていないメッセージアプリを開いて、明日の予定を聞く内容を打ち込んでいく。それを送信しようとした時だった。
「えっ?」
勝手に部屋のドアが開いたと思ったら、丁度今メッセージを送ろうとしていた本人がいた。高専の敷地内にお互いの住んでいる場所はあるから来ようと思えばいつでも来れる、連絡する手間も省けた。それでも五条が目を丸くしたのはそのままずかずかと部屋に上がってきた伏黒の勢いにだった。
「え、なになに」
玄関から一直線に五条がいるリビングまで来たのだろう伏黒は、戸惑う五条を気にもしないで隣に腰を下ろす。その勢いにソファのスプリングが軋んだ音を立てた。
一体なんだと思っている間に今度は手を掴まれて、まさか持ってきたのか爪やすりで一つ一つ爪先を整えられる。
テレビもついてない部屋でお互い無言になると爪が削られる音だけが響いてシュールな空間だった。さりさりと丁寧に整えていく伏黒はやっぱり何も言わなくて、黙々と五条の爪先だけを見つめている。
「……あの、さ」
その伏黒の頭頂部をじっと見ていれば意図に気がつくというもので。五条の指先がどうしていつも深爪気味で、しかもちゃんと丸く整えられているのか。その理由といったら伏黒しかいない。伏黒だってその理由をちゃんと知っているはずだ。本当は五条の指先は今も特に整える必要はないのだが、それでもこうして伏黒自らやってくるということは、つまりはそういうことに違いない。五条の短く整えられた爪先はそういう意味を含んでいる。
「…明日、休みって聞きました」
「そう、だね」
「風呂、自分の部屋で入ってきました」
「どうりで肌がしっとりしてるわけだ」
掴まれていない方の手で薄らと赤く色付いた項の辺りに触れれば、そこはいやに暖かくて水分を含んでいた。項から後頭部へと手を滑らせたら髪だって少し湿っていた。ここまでされて分からない程付き合いは浅くないし、鈍くもないし、その気にならないわけもなく。
器用なわりに変なところは不器用だとは思っていたけれど、こういうことは苦手だとは思っていたけれど、そもそも伏黒から来るとは思ってもなかったけれど、それにしたって。
「……誘い方下手すぎない?」
気付いてしまえば突飛な行動が途端に可愛く見えてくる。一応伏黒もそういう気分になる男の子だと分かって嬉しいやら、わざわざ部屋から爪やすりを握り締めてここまでやってきたのかと思うと可愛いやら、最低限の準備はしてきたくせに五条とそういうことをしたいのだと口に出せないところが愛しいやら。
相変わらず人の指先を見つめたままの伏黒の顔を覗き込めば、やりにくいと押し退けられてしまった。押し退ける手のひらが熱くて、一瞬見えた頬は真っ赤で、丸見えの耳も真っ赤だった。
これは今夜は頑張らないとだな、なんて思って笑いを噛み殺せば肩が揺れて五条が笑ったことに気がついたのか、照れ隠しに「やりにくい」とまた叱られてしまった。
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