薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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喜びも悲しみもさぁお手を拝借
柊英です


「いや、これはですね…」
 そう言い訳する声はどんどん小さくなる。目の前のテレビでは女の子達の歓声と可愛らしいポップな音楽が流れている。そしてそれに重なる、まだ声変わりをしていない柊羽の歌。悪いことをしているわけではないのだけど、柊羽も壱星も壱流もいない今のうちにと共有ルームの大きいテレビで見てしまったのがいけなかった。悪いことをしているわけでもないし、柊羽も機嫌を悪くしているわけではない。ただ英知が勝手に居た堪れないのだ。見るならファンの子達のようにペンライトを持って全力で楽しみたいと思っていた。いつも自室で見る時はDVDプレーヤーの大きいとは言えない画面しかなく、それに物足りなく思っていた矢先に共有ルームが英知1人になって。ああ、とテレビから落とした視線を更に落とせば柊羽のメンバーカラーにペンライトがせっせと光っていた。
「ちょっと、元気をもらおうかと…」
「元気」
「元気になる、おまじないと言いますか、なんか元気を貰えまして…」
 今の柊羽に不満があるわけでも一緒にいて疲れるわけでもないのだけど、まだ成長し切っていない身体で目いっぱいステージの上を駆け回って、これからまだ成長と共に伸びるであろう腕を更に必死に伸ばして手を振って、屈託のない笑顔を振りまく柊羽を見ていると元気を貰えるのだ。きっと英知のファンの子達が言う「堀宮くんを見ていると元気になります」という言葉はこういう意味なのだろう。
「なるほど、英知は昔の俺に元気を貰っていたのか」
「いやもう、ほんと、改めて言われると恥ずかしいというか、居た堪れないというか」
「居た堪れないのは俺の方な気もするが」
「その通りですね…」
 画面の向こうで幼い柊羽が大好きです!と叫んでいた。この時の笑顔がまた少しの照れを乗せていて可愛いのだ。もう何度見たか分からない映像が脳裏に浮かぶ。
「っふふ、」
 ふと隣から笑い声が聞こえて顔を上げて見れば柊羽がもう我慢出来ないというように肩を震わせていた。
「俺は気にしていないからそんな顔をしないでくれ。恥ずかしい映像でもないし、そもそも俺が英知を元気づけられているなら良いことじゃないか」
「そういうもの…?」
「そういうものだ。…ああでも」
 柊羽の目が緩く細められて、ペンライトを強く握る英知の手元を見た。その視線が何を意味するのか、それを考える前にQUELLの和泉柊羽とは違う色をしたペンライトが取り上げられてしまう。それはあっさりと電源を落とされると柊羽の背中へと隠されてしまう。横目で見たテレビの向こうでは柊羽だけではなく他のメンバーもステージへと上がっていて、英知が好きな歌を歌おうとしていた。たくさんのメンバーがいる中で柊羽が与えられたソロパート。そのフレーズが英知は好きだった。
「握るのならペンライトじゃなく、俺の手にしてほしいな」
 そんな大事そうに抱えられると少し妬けてしまう、そう柊羽が告げて英知の手を取った時。英知の耳に柊羽の今より高い歌声が届いた。疲れた時も悲しい時も手を繋いで分け合えばいい。
「…俺の心を読まないでくれます?」
「長い付き合いだから分かるだけさ。少しは俺にも分けてくれていいんだよ、英知」
 敵わないと柊羽の手を握り返せば画面の向こうではタイムスリップした柊羽が眩しい笑顔で英知に手を差し伸べていた。

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