薄明
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幸福論
柊英です
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「幸せって、なんだろうねぇ」
真っ青な空には大きな白い雲が描かれていた。9月の初め、夏の終わりのはずのこの時期はしかしまだ夏を色濃く残していた。例年になく暑かったその温度は、9月になってもまだそこにあった。まだうっすらと背中に汗が滲む。雲を流す風は同じ様に寮のベランダに佇む英知と柊羽の髪を撫でていく。
「どうしたんだ、いきなり」
「いやー、ちょっと物思いに耽りたくなっちゃって」
壱星と壱流に追い出される形でベランダにやってきたものだから、手持ち無沙汰に手すりを撫でることしかできない。耳を澄ませば閉じられたガラス戸の向こうから双子の声が聞こえる。
英知の隣で同じように手持ち無沙汰にしていた柊羽が幸せか、と呟いた。
ぬるい風に当たりながら、隣にいる柊羽の気配とガラス戸の向こうにいる双子の賑やかな声とどこか遠くから聞こえる都内の喧騒に耳を傾ける。それはどこか柊羽が英知の為に作ってくれた歌のようだった。目を閉じればそれはより一層英知の中で響き渡る。柊羽が水を与え続けた花達は、今こうして美しく花を咲かせて小さな花束達になったのだ。
「きっと、幸せというのは今のことを言うんだろうな」
ゆっくりと柊羽の右肩が英知の左肩へと体重をかける。柊羽の重みを感じながらそっと目を開ければ空にはやはり大きな白い雲が広がっていた。からりと晴れた今夜はきっと月が良く見える。双子はさぞかし喜ぶだろう。
このまま時が止まればいいのに。今この瞬間で全ての時間を止めたいわけではなく、この時間がいつまでも続けばと、そう願う。明日も明後日もその先もこうして穏やかな時間が続けばいいと願うのだ。そう簡単に上手くはいかないのだろうけれど、それらを乗り越えた先でひとつの笑い話として語れたら、それはとても素敵なことだ。
幸せとは、今この時間を指すのだ。
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2026.01.09 21:39:42
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柊英です
「幸せって、なんだろうねぇ」
真っ青な空には大きな白い雲が描かれていた。9月の初め、夏の終わりのはずのこの時期はしかしまだ夏を色濃く残していた。例年になく暑かったその温度は、9月になってもまだそこにあった。まだうっすらと背中に汗が滲む。雲を流す風は同じ様に寮のベランダに佇む英知と柊羽の髪を撫でていく。
「どうしたんだ、いきなり」
「いやー、ちょっと物思いに耽りたくなっちゃって」
壱星と壱流に追い出される形でベランダにやってきたものだから、手持ち無沙汰に手すりを撫でることしかできない。耳を澄ませば閉じられたガラス戸の向こうから双子の声が聞こえる。
英知の隣で同じように手持ち無沙汰にしていた柊羽が幸せか、と呟いた。
ぬるい風に当たりながら、隣にいる柊羽の気配とガラス戸の向こうにいる双子の賑やかな声とどこか遠くから聞こえる都内の喧騒に耳を傾ける。それはどこか柊羽が英知の為に作ってくれた歌のようだった。目を閉じればそれはより一層英知の中で響き渡る。柊羽が水を与え続けた花達は、今こうして美しく花を咲かせて小さな花束達になったのだ。
「きっと、幸せというのは今のことを言うんだろうな」
ゆっくりと柊羽の右肩が英知の左肩へと体重をかける。柊羽の重みを感じながらそっと目を開ければ空にはやはり大きな白い雲が広がっていた。からりと晴れた今夜はきっと月が良く見える。双子はさぞかし喜ぶだろう。
このまま時が止まればいいのに。今この瞬間で全ての時間を止めたいわけではなく、この時間がいつまでも続けばと、そう願う。明日も明後日もその先もこうして穏やかな時間が続けばいいと願うのだ。そう簡単に上手くはいかないのだろうけれど、それらを乗り越えた先でひとつの笑い話として語れたら、それはとても素敵なことだ。
幸せとは、今この時間を指すのだ。
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