薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
 非公式二次創作ブログサイト

メイン

情けない話は花火の向こうへ
柊英です


 誰かと花火を見るのは随分と久しぶりだった。見ることはあってもテレビの画面越しや、仕事の撮影で見ることばかりで親しい人と見るなんてことはなかった。だから少しだけ浮かれているし、我儘にだってなる。
 地面が揺れるような音と、それから少し遅れて小さな光が夜空へと上がっていく。柊羽と英知がいる場所から少し離れた所で行われている夏祭りの喧騒が、次の瞬間轟いた光の弾ける音でかき消される。ぱっと広がり形を作る光に、英知が小さく声を上げた。きらきらと光が夜空へ溶け込むように消えていく。たった一瞬の美しさに、英知の瞳が瞬く。大きい瞳は簡単に空に散る光を集めてきらきらと瞬いて、そこに星を住まわしていく。それに僅かばかり嫉妬してしまう自分は、さぞかし狭量な男なのだろう。気がつけば柊羽の視線は打ち上げられる花火ではなく、それを見つめる英知にだけ向けられていた。
「…柊羽」
「どうした」
「そんなに見られたら気になりますって」
 淡々と打ち上げられていた花火が、一瞬止まる。再び少しずつ聞こえてきた祭りの喧騒に、英知の視線がやっとこちらへ向く。
「すまない。少し妬けてしまって」
 英知が丸い目をいくつか瞬きさせて、それから首を傾げる。その後に続いた、何に?という言葉は柊羽が答える前に再び始まった轟きに飲み込まれてしまった。きっとこれが最後の打ち上げ花火なのだろう。先程とは打って変わって一斉に絶え間なく地面が揺れては轟音に続いて夜空に光の点が登っていく。空が明るくなって、いくつもの光が一瞬の輝きでもって夜空を彩る。ああ、きっとこれは、神様からかっこ悪い嫉妬なんてしているなというお告げなのだろう。
 一斉に始まった花火は、そう長くは続かず最後に1番大きなものを打ち上げて終わった。雲のように流れる火薬の煙が夏の終わりを知らせるようだった。
「柊羽、さっきの妬けたって?」
「…なんでもない。忘れてくれ」

畳む

編集

Powered by てがろぐ Ver 4.2.0.