薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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白い悪夢
柊英です


 瞼の裏に陽の光を感じ、重たい瞼を持ち上げる。光の差す方へと顔を向ければ、ベッドサイドに腰掛けた英知の背中があった。まっさらで、薄く筋肉のついた綺麗な背中が朝日の中で影になって浮かぶ。柊羽からは見えないが、けれど英知の顔が何だか少しだけ寂しそうな気がして。
 ベッドから起き出して、今は見えない英知の頬へと手を伸ばす。
「…柊羽?」
 シーツの擦れる音で気が付いた英知がこちらを振り向く。その横顔は涙で濡れていなかった。柊羽の指先が、英知の頬に触れる。
「…泣いてるのかと、思った」
「泣く要素なんて何もないじゃない」
 そう言って笑う英知の頬には昨夜の名残で僅かに乾いた涙がぱらぱらとあるだけで、確かに真新しいものはなかった。朝日が運ぶ白い光の中、頬の輪郭が境界を溶かしていく。
「英知の言う通りだな。悲しい要素なんてどこにもない」
 頬に伸ばした手を今度は腰へと回し、両腕で固く抱き寄せる。首筋へと鼻先を埋めれば、濃い英知の匂いがした。
「っふふ、柊羽どうしたの。甘えたさん?」
「かもしれない」
 小さな子供をあやす様に英知がゆっくりと身体を揺らす。その心地よい揺れに身を任せながら、間違いなく英知がそこにいることを確認するように更に強く腕に力を込めた。苦しいだろうに、それでも何も言わない英知に甘えながら。

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黒い瑞夢


「…英知、起きてたのか」
 しんと静まり返った廊下を進み共有ルームへと入れば、キッチンに英知の姿があった。明かりを一つだけ灯してその中に立つ英知は1つの写真のように様になる。
 グラスに入った水を飲もうとしていた手を止めて英知が不思議そうにこちらを見やった。
「柊羽、どうしたの?」
「少し目が覚めてしまって。英知も?」
「うん。なんかちょっと嫌な夢見ちゃって、寝るに寝れなくなった」
 キッチンへと足を踏み入れ、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをグラスへと注ぐ。グラス越しに冷やされた水の温度を感じる。その冷たさに少しだけ頭の中がクリアになった気がした。クリアになった分だけ、朧気だった夢が更に曖昧になっていく。
「俺も、嫌な夢を見たんだ」
「偶然だね…どんな夢?」
「それがはっきり覚えてないんだ」
 苦く笑って、覚えていないけれど決して好ましい記憶ではなかった夢をミネラルウォーターと共に流し込む。
 さてどんな夢だっただろう。曖昧な記憶を辿っていけば、分かるのは柊羽の隣に英知がいなかったことくらいだ。英知がいない代わりに、別の誰かがいた。
「ただ分かるのは、英知の姿を見てひどく安心してる俺がいる、ということくらいかな」
「…なんか、俺と似た夢みたのかもしれないね」
 英知がそう言って眉を下げて柊羽の顔を見る。
 じっと見つめられて、その視線に焦れったさすら感じ始めた頃にようやっと英知が口を開く。
「…ちゃんと、柊羽だなぁ」
「それは、そうだろう」
「ふふ、そうだね」
 静かに英知の頬に手を伸ばせば、その手に身を委ねるようにそっと目を閉じる。柊羽が英知の姿を確認するように、英知もそうやって柊羽の姿を確認しているようだった
「そんなに恋しいなら、忍び込んでくれてもよかったんだぞ」
「今何時だと思ってるのさ」
「英知に起こされるなら何時だって構わないよ」

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