薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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君と起こした運命が一つ
柊英です


 夜空には淡い月が瞬いていた。綺麗に丸く空に存在するそれは、柊羽を照らす。ベランダで夜風に浸る柊羽にとってそれは心地よい照明と同じだった。
 スマートフォンから英知の軽やかな声が届く。電波に乗って1秒のラグもなく英知の声が今日あったことを伝えてくれる。今朝目玉焼きの為に割った卵が双子だったことも、それを壱星と壱流に見せたら大層喜んでくれたことも、英知なしでも2人で頼もしく仕事に行ってくれる姿が嬉しい反面少し寂しい、なんて話も。英知の感じた24時間を共有するように。
「…あ、そうだ」
 最低限の相槌だけで静かに耳を傾けていた柊羽の気を更に引くように英知がぴたりと先程までの話を止める。
「柊羽はさ、運命って信じる人?」
 ふいの問いかけに少し考えてから「英知と壱星、壱流に出会えたことは運命だと思ってるよ」と返した。神様なんて信じちゃあいないが、この巡り合わせはきっとどこにいるか分からない神様が運命とやらで起こしてくれた奇跡なのだろう。そう思っている。
「ふふ、俺はねえ、今日ちょっと運命感じちゃった」
 きっと聞いたら柊羽も運命感じちゃうよ。どこか弾んだ声で言う英知に小さく首を傾げる。傾げたところでその姿は電波に乗って英知に届きはしないのだけど。続きを促せばスピーカー越しでも分かるくらいに弾んだ声で話し始める。もしかしたらその運命に浮かれて酒でも嗜みながら話していたのかもしれない。最初に比べてどこかふわふわとし始めた口振りにそんなことを思う。
「俺が柊羽にあげたピアス、あるでしょ」
「ああ。今もつけているよ」
「ありがと。今日の撮影でね、そのピアスと同じ石を使ったイヤリングを使ったんだ。しかも付けた場所が俺が柊羽に開けた場所と一緒でさ。…なんか、運命感じちゃった」
「俺も、なんだか今日は外したくなくてずっと付けてたんだ」
 仕事の時はあまり付けないようにしている筈の英知から貰ったピアス。けれど今日はどうしてだか外したくなくてそのままにしてしまっていた。目立たないにしてもいつもは付けていないピアスだ。誰かに何か聞かれたらどう誤魔化そうと思いながら、それでも近くに英知を感じたかったのだ。英知が恋しくてまだまだ大人になりきれない、そう自嘲だってしたのに。それがまさか今に繋がるなんて。
「不思議な偶然だな」
「ふふ、そこは運命だって言おうよ。すごいなぁ、柊羽も付けててくれたなんて。今日は俺達お揃いだ」
「お揃い、か。…近くで見たかったな」
 話せば話すほど英知に会いたくなるようだった。どうしたって身体は素粒子になって電波には乗れないし、仕事を放り出して空港に駆け込む訳にもいかない。ただただ姿の見えない数日前の英知の記憶に焦がれていく。今朝から英知が恋しくて堪らなかった気持ちは今になっても続いたまま、それどころか更に強くなっていく。
「あんまりにも可愛いことを言うから会いたくなった」
「会いたくなったから、電話したんだよ。もっと俺と同じくらい会いたくなってよ」
「…さては酔っているな?」
「んふふ、さぁどうでしょう」
 英知の笑い声がスピーカーの向こうで揺れる。こんなことならビデオ通話にでもして顔を見てやれば良かったと思う反面、きっと今の英知の顔を見てしまったら今すぐ帰りの飛行機のチケットを取ってしまいそうだとも思った。
 英知はずるいな、そう緩く笑った柊羽を月が淡く照らし右耳にあるルミナスグリーンを美しく光らせていた。

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