薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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お説教

 丸一日近い休養期間があったとはいえ、それでもまだ少し身体は重い。無理をしたのだから当然といえば当然だけれどいつまでも休んでいられる訳もなく、真希が待っているグラウンドへと向かっていた。今日は長物を使った体術の練習に付き合ってもらう予定だったのだ。
 窓の外は気持ちいい青空で、それをぼんやりと眺めながら廊下を歩いていると不意に後ろから声をかけられた。
「…先生」
 やたらと長い足でもってあっという間に距離を縮めてきた五条は上機嫌に言った。
「八十八橋の件、聞いたよ。領域展開までしたんだって?凄いじゃん」
「ありがとう、ございます…」
 にこにこと笑みを絶やさない時は本当に機嫌がいい時か、逆に少し機嫌が悪い時だ。そして五条の機嫌が悪くなる心当たりがあるだけについつい視線が下がっていく。褒められた、それは当然嬉しいのだけど。
 後で悠仁達にも伝えといてね、と前置きをしてから言葉を連ねる五条の話を聞いていくと、ある程度話したところでそれはぴたりと止まった。ちらりと見上げると、五条の大きな手のひらが伏黒の顔の両側に来て、それが一瞬離れたかと思うと2つの平手が同時に伏黒の両頬を叩いた。静かな廊下に小気味いい音が響く。
「っ〜〜!」
「でもさ、大人の言うこと守らないで動いたのはいけないよ」
 頭が揺れる感覚がして、それから遅れて痛みと熱さがやってくる。その後も最初に比べて軽いものではあるが両の手のひらで頬をぺちぺちと叩かれて視界が僅かに揺れる。
「…すい、ません」
「今回は無事だったし実績も残したけど、悠仁や野薔薇が死んだっておかしくなかったし、恵が死んでたっておかしくなかった。言ってること分かるね?」
「は、い…」
「津美紀が大事なのは分かるけど、せめて僕にくらいは連絡しなさい」
 本当は一瞬五条のことがチラついた。出張から帰ってくればどうにかしてくれるんじゃないかとも思った。そうじゃなくても連絡くらいはして意見を仰げばよかったとも思う。それをしなかったのは焦っていたからだ。呪いが発現するまでのタイムリミットと、自分の成長に対する焦り。結果的に無事に終わったとはいえ軽率だった。
「すいません…」
 ぺち、と叩いていた手が止まって今度は真っ赤に腫れた頬を撫でる動きに変わる。ひりひりとした痛みを感じながら五条を見上げれば今度はちゃんと上機嫌な笑みだった。
「はい、じゃあその真っ赤な顔で稽古行きな。説教はそれでおしまい」
 頬を撫でられながらそう言う五条に首だけを縦に動かせば、他に用事があるのか満足気に頷いてから伏黒を追い越して廊下の向こうへと消えていった。
 離れていった温度も分からないくらい腫れた頬を押さえていると、曲がり角から顔を覗かせた五条が言った。
「恵なら出来るって思ってたよ!」

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