薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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彼岸
まだ渋谷終わってなかった頃に書いたやつ

「なにそれ」
 そう言って指を向ければ伏黒はなんてことないように「お盆なので」と答えた。大して揃えられてもない食器棚から適当に見繕ってきたであろうグラス。何度か伏黒の部屋に遊びに来ているけれど、見た記憶がないということは棚の奥で埃でも被っていたのかもしれない。そんな古いグラスに若干萎れた彼岸花が挿さっていた。
「そこは菊じゃない?」
「菊って感じじゃないですから。ちょっと不吉なくらいが丁度いい」
「…それ、誰のこと指してる?」
 草臥れた彼岸花は買ってきたものではないのか、おざなりに水に差し込まれている茎の根元はちぎったようなあとがあった。真面目そうに見えて意外と雑で大胆なことをするこの子は、どこかで偶然見つけたこれを無断で拝借してきたのかもしれない。花1本毟ってきたところでそれを咎めるような真面目さなんて自分にはないが、背中にひやりとした汗が伝う。
 伏黒が白くて細い指で燃えるような花の表面を撫でる。
「父親かもしれない人、ですかね」
 あの渋谷で何があったのか、おおよそは伝えられていても全てを把握しているわけではない。五条の知らない所で何かを知ったこの子は、何を見た?
「あ、」
 余程死に体だったのか、指に押されて花びらがぽろりと落ちた。

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