ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ 非公式二次創作ブログサイト
2025年9月10日の投稿[1件]
2025.09.10 12:35:01 小説 編集
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子供が小さくて弱くて脆い生き物だというのは分かっていた。けれどそれは知識として理解しているだけで、実体験としては理解していなかった。
子供の平均的な体型なんて知らないけれど、それでもまともな食事が取れていない故の細っこい身体。骨と皮だけ、とまでは言わないけれどちょっと強く掴んだら簡単に折れちゃいそうなくらい脆く見えた。実際その脆さは思っていた通りで、連れて行った任務で恵の腕をぽっきり折ってしまった時に硝子にこっぴどく叱られながら意識を改めたものだった。子供って手がかかって(今思えば恵も津美紀も子供にしては聞き分けが良すぎて手なんてまるでかからなかったのだけど)気を遣う。めんどくさいな、なんて思ったりもしていた。それでも誰かに恵のことを任せたくなかったのは、知らぬ間に僕の中で恵の存在がその辺の適当な人たちとは違う場所に居たからだ。平たく言っちゃえば大事になってたってこと。
「…鼻歌ウザイんすけど」
「子供の成長を喜んでんのよ」
「はぁ…」
そんな細くて貧弱で簡単に死んじゃいそうな子供は、今はすくすくと育って体重も増え、僕にはボコボコにされるけど簡単には死なないようになり、ついでにちょっとふてぶてしくなった。ノリのいい鼻歌に文句を言いながらも、僕が恵の手を離さないのには文句言わないんだよね。昔は恵の手なんて本当に小さくて、片手で両方掴めるとかじゃなくて片手で両方握り潰せそうなくらい小さな豆粒サイズだった。それが今やしっかり繋ぎ返して指まで絡めてくるサイズ感だ。
「そういえば明日」
「ん?」
「……スーツとか、ちゃんとした格好した方がいいですかね、やっぱ」
子供の成長は早いなんて言うけれど、実のところ変わったのは見た目だけじゃなくて関係も。出会った頃はまさか指を絡めて手を繋ぐような仲になるなんて思ってもみなかったし、恵のお姉さんに僕たちの関係を報告する日がくるとも思ってなかった。
明日、僕と恵は津美紀に「実は付き合ってます」の報告をしに行く。今日はその前乗りで、2人揃って任務をお休みして津美紀の家の近くに宿を取ったのだ。そしてその宿に向かう道中ってわけ。お互い多忙で、直前まで仕事だったから宿に向かうのも月が顔を出す時間になってしまった。
恵が高専を卒業すると同時に2人で暮らし始めるのかと思いきや、津美紀にNOを突きつけられて恵と津美紀は別々に暮らしている。なんとなく、その時点で津美紀は何かを察している気がするけれど、恵には黙っている。びっくりしすぎて固まる恵は見たいしね。
「別にいつも通りでいいんじゃないの?そこまでかしこまるような場じゃないし。てか、お互い任務から直で来てんだからスーツなんて持ってきてないじゃん」
「…そこはほら、五条さんが買ってくれるんじゃないかと」
「現地調達で?」
そうです、と当然の顔をして頷くもんだから「お前ってさぁ!」と笑って思わずおでこを小突く。スーツくらい欲しいんならいくらでも買ってあげるけれど、当然みたいな顔しちゃって。といってもそうやって育てたのは他でもない僕だけど。
「でもほんと、スーツとかいらないよ。そのまんまの僕たちでいつも通りに過ごしてさ、付き合ってますって言おうよ。いつからってのは…まぁ、ぼかそう」
「叱られますからね」
小さく笑って恵が僕と繋いだままの手をゆらゆらと揺らした。
あんなに小さかった手が、今じゃ絶対離したくない大事な手になってるんだから人生ってのは小説より奇なりってやつだ。
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