ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ 非公式二次創作ブログサイト
2025年8月16日の投稿[1件]
2025.08.16 17:55:59 小説 編集
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年々夏は厳しくなっている。窓を開けて扇風機を回して冷たい麦茶でも飲めば夏を感じられたのは昔の話で、今や突き刺さる日差しから逃げるようにクーラーの効いた部屋に籠るのが今の夏だ。しかし、それだけ暑くとも授業はあるし、任務だって外を駆け回る。蝉の鳴き声を背に、今日も教え子たちはグラウンドで稽古に勤しんでいる。山の中にある分、街中よりは幾分マシな暑さだろうが、それでも暑いことには変わりない。
生徒たちへの差し入れとして自販機で適当に飲み物をまとめて買った五条は、グラウンドへと向かいながら毎年この時期になると体調を崩しがちな伏黒のことを思い出した。幼い頃から夏の日差しと湿気が苦手で、食欲が減っては夏風邪を引きやすくなるのだ。五条も忙しい身、そう頻繁に様子を見に行けたわけではなかったが、クーラーもないあのアパートに顔を出すときは決まってアイスをお土産にしていた。開け放した窓から入り込む蝉の鳴き声と、扇風機が送る温い風に当たりながら冷蔵庫で冷えた麦茶と一緒にアイスを食べる。もうすっかり懐かしいものになってしまった夏の思い出だ。
痛いくらいの日差しが差し込む廊下を歩きながらグラウンドの方を見れば、隅っこの方に座っているのが一人。どれだけ離れていたって分かる。伏黒だ。眩しいのか少し目を細めてじっと稽古を続けている虎杖たちを眺めていた。その顔がいつもより少し白い。
足早に廊下を進み、一歩外へと踏み出せば一気に汗が滲む。なるべく気配を消して伏黒の背後に回った五条は手に持っていたペットボトルを持ち上げた。
「サボり?」
「っ、…な、にすんですか」
結露で水滴が滴るそれを急に頬に当てられて大きく伏黒の身体が揺れる。犯人の目星はすぐについたのか、五条を見上げる目に苛立ちはない。
「差し入れ持ってきたんだけど、サボってる子がいたからちょっといたずら」
「サボりじゃなくて休憩してたんですよ。すぐ戻ります」
頬に当てられたペットボトルをそのまま受け取って、今度は首筋に当てた伏黒が小さく息をつく。額から流れた汗が頬を伝って首筋へと消えていく。その横顔はやはり覇気がない。
「相変わらず夏に弱いね」
「…んなことないです」
「ま、そういうことにしといてあげるけどさ。悠仁達に心配させたくないんなら、ちゃんとご飯食べて水分とりなよ」
「飯くらい、ちゃんと食べてます」
分かりやすく顔を顰めた伏黒の頭を軽く小突いて、未だ保冷剤代わりにしているペットボトルを取り上げる。キャップを捻って差し出せば、何か言いたそうな顔で渋々受け取った。人に心配されたくなくてすぐ隠そうとする。隠すのだけは上手い伏黒のことだ、五条が来なかったらこの稽古が終わって自室に帰るなり夕食を食べるのも忘れてベッドで寝落ちるだろう。
「はいはい、ちゃんと食べてるってことにしとくから飲んどきな」
「…はい」
夏が苦手な伏黒は、冷たい麦茶だけはよく飲んだのだった。
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