ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ 非公式二次創作ブログサイト
2025年6月20日の投稿[1件]
2025.06.20 20:14:38 小説 編集
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デリカシーが無いというと槍玉に上がるのはいつも僕だが、しかし苦言を呈したい。恵だってデリカシーがない。
僕の隣でうっすらと額に汗を滲ませてあつあつのカレーうどんを食べている恵は、おでこに張り付いた数本の前髪に気づいていない。有名うどんチェーンの初夏限定カレーうどんが食べたいと言ったのは僕だったが、その提案に文句も言わずに「いいですね」と恵が着いてきた理由は分かっている。麺をすするのが苦手なのもあって音も立てずに静かに食べている恵は、時折お手拭きで自身のシャツを拭いていた。これだ。こういうところがデリカシーがない。
テーブルの下でぴとりと僕の足に自分の足をくっ付けている恵は、無下限のお裾分けをしてもらっている。
僕の無下限があれば確かにカレーうどんが跳ねてもシャツには付かないし、お手拭きでさっと拭くだけでぴかぴかだ。でも、僕が無下限をお裾分けしなかったら絶対カレーうどんなんて食べに行かない。アンタひとりで行ってください、なんて可愛くないことを言う筈だ。
「…前から思ってんだけどさ」
人のことをエプロン扱いするのはどうなの?その僕の言葉に、恵は不思議そうに瞬きをした。少し考えてから言ってることを理解したのか、うどんを静かに飲み込んで言った。
「エプロン扱いとかじゃないですよ。便利だなとは思ってますけど」
「人を便利アイテム扱いして!」
「物扱いはしてませんって」
「じゃあ僕が恵にくっつかないでねって言ったらカレーうどん食べに来た?」
少しの間。
ちらと視線を泳がせた恵はあっけらかんと言った。
「行かないですね。汁はね気にして食べるのめんどくさいんで」
「ほらも〜!夏もさぁ、僕の影ん中潜って移動すんじゃん。あれだって僕のこと涼しいタクシー扱いしてるってことでしょ?」
真夏になると、恵は僕の影の中に入って移動する。僕の後ろに陣取って日陰にいるとかそんなんじゃない。本当に影の中にすっぽり潜ってしまうのだ。アイス食べたいからコンビニ行こうよ、なんて言うと二つ返事で「良いですよ」と返してしれっと人の影に潜り込む。そして僕に移動させてコンビニ近くで何食わぬ顔で這い出て、外暑いですねなんて言う。1番暑いのはここまで移動してきた僕なのに!
「汗かくの嫌なんですよ」
「それは僕も」
「それにあんたの影、居心地いいんですよね。好きな相手だからですかね?」
「……っぐ、」
小さく首を傾げて可愛いことを言う。これは僕がこの手の発言に弱いのを分かっての物言いだ。きっと恵はこの話題を面倒くさがっている。適当に可愛いことを言って有耶無耶にして、そしてまた僕を使って涼しく移動して安全にミートソーススパゲティでも食べるに違いない。今日こそは恵のデリカシーの無さにしっかり物申して、夏は一緒に汗だくになりながらコンビニ行って、無下限なんてなくても一緒にラーメンを食べにたいのだと伝えなくては。
「……僕だって、恵に頼られるの、嫌いじゃないし、むしろ嬉しいし」
「はい」
「…こういう頼り方してくるの、僕にだけだって…分かってるし……」
深い深い溜息をして、項垂れた。
「今回だけだからね。次はお裾分けしてあげない」
残念ながら僕の惨敗だ。どんな形でも、人のことを便利アイテム扱いしていようと、恵に頼られるのは嬉しい。僕にだけこんなどうしようもない甘え方をしてくるのは嬉しいに決まっているのだ。普段はしっかり者の恵が、僕には雑に甘えてくる。可愛くないわけがない。
「ありがとうございます。今日が最後なので、大事に食べますね」
最後だなんて思ってないくせに、いけしゃあしゃあとそんなことを言った恵は静かにうどんを食べるのを再開した。
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