薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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2025年5月17日の投稿1件]

反省の弁は要らない
話に出てくる一回目はこれ▶彼シャツトレンカ


 事後、恵は怒ると布団の中にまんまるに篭ってカタツムリになる。今日手に入れた豆知識。
 僕は目の前にある大きなカタツムリを前に、小さく溜息を吐き出した。恵に呆れた溜息ではなくて、この殻を剥がして顔が見たいんだけどな、という溜息だ。
「恵ぃ、そろそろ中暑くない?」
「次やったら殺す」
「物騒なこと言わないの」
 ちょんちょんと布団をつついて声をかけるも、さっきから恵の返事は「次やったら殺す」の一択だ。布団の中は暑いだろうに、それでも中に籠ったままこれしか言わないのだが原因は僕にあるばかりに下手に強く言い返せなかった。
 恵が事後の甘い空気もなくこれだけ怒って拗ねている理由。ざっくり言えばセックスで恵が嫌がることをしたからだ。何をしたかあけすけに包み隠さず言ってしまえば、恵に潮を吹かせた。実は恵に潮を吹かせたのはこれが2度目なのだが、前にトレンカを履いたままの恵にストッキング素材を使って擬似ローションガーゼのようなことをした際にしたのが1回目。その時も恵は未知の快感に嫌がり、初めて目にした潮に漏らしたのかと真っ青になって一波乱あったりしたのだが(その後、仕切り直してセックスを再開することになったのだが、1度シャワーを浴びると言って恵は1時間ベッドに戻ってこなかった。思えばあの時から相当怒っていたのだろう)、あれから時間もだいぶ経ったし快楽で頭もふわふわしている終盤なら意外といけるだろうという僕の読みが外れた。
 気持ちよさそうに果てて、そんな恵につられるようにして僕も果て、眠そうな恵の為にシャワーは起きてからにしようと一先ず水を取りに行ったら、互いの体液やら何やらでぐちゃぐちゃのバスタオルがベッドの下に蹴落とされ、代わりに隅に寄せられていた布団を頭から被った布団つむりの恵が爆誕。気持ちよさで頭がぽやんぽやんになっていても嫌なものはしっかり覚えていたのだ。
「あれっておしっこじゃないしさ、気持ちいいから出るものだし、僕は気にしないよ」
「あんたが気にする気にしないじゃなくて俺が嫌なんですよ」
 くぐもった声が久しぶりに「次やったら殺す」以外の鳴き声を発した。もしかして対話の余地が生まれたのかもしれない。
「やっぱ恥ずかしい?でも見てるの僕だけだし」
「だからあんたが見てようが見てなかろうがどうでもいいんですよ。俺が恥ずかしくてマジで嫌だっつう話なんですけど。分かってます?」
 今舌打ちが飛んだな。対話の余地があるかと思ったけど僕の勘違いだったらしい。言葉に棘が多い。
 うーん、と唸ってこの子をどうするか考える。早いことここから出てきて顔を見せてほしいし、ついでに次の機会もほしい。好きな子のえろい姿なんていくらあってもいいし、見れるんなら見たいに決まってる。今回の恵は正直かなりきたし。
「あれが癖になったらどうするんですか。毎回あんなの出すようになったら困る」
「…すごくえろいな!?」
「やっぱ次やったら殺す」
 恵の言葉に思わず想像して考えるより先にえろい!と声が出てしまった。所謂ハメ潮ってやつ?実際には見たことないけど恵で想像したらすごくえろい。見たすぎる。そんな僕の心の声が飛び出してしまったのは不可抗力というやつだ。さっきも思ったけど好きな子のえろい姿はいくらあってもいいに決まってる。
「ごめんて、でも正直そんな恵はすごく見たい。えろすぎる」
「殺す」
「次こそ事前にお願いするし」
「絶対嫌です」
「ベッドもっとべちゃべちゃになっても平気なように防水シーツ買うし」
「しつこい」
「絶対気持ちよくするし!」
「だからそういう話じゃないつってんだろ!」
 がばりと布団つむりが起き上がり、真っ赤な顔をした恵が叫んだ。暑いからか、それ以外か、首まで真っ赤な恵は僕の頭をすこんと叩いた。グーじゃなかったのは温情か。
「っき、気持ちよくするとかしないとかじゃなくて、ベッドぐちゃぐちゃになるのが嫌とかじゃなくて、俺が恥ずかしいから嫌だつってんでしょうが!」
「気持ちいいから出るもんだから恥ずかしくないって!」
「知るか!俺は恥ずかしいんですよ!日本語分かります!?」
「分かるよ!日本人だもん!」
 恵にぺし、ぺしと頭を叩かれながらどっちも譲らない押し問答を繰り返していたが、やがて恵の方が折れた。折れたというよりは、この恥ずかしいから嫌!えろいから見たい!の押し問答のあほらしさに疲れたと言うべきか。未だ赤いままの顔で恵は舌打ちをしてから僕の鼻を摘んだ。痛い。軽くとかじゃなくて鼻折れそうなくらい本気で掴んできてる。
「…次やる時は絶対事前に言うこと。絶対はいとは言いませんけど、とりあえず俺の承諾を取ってからにしてください。絶対はいとは言いませんけど」
「……はい」
 あっ、たぶんこれ、本気で頼み込んだらやってくれるやつだ。僕はそう気付いたが真面目な顔を作って真剣に頷いた。恵は押しに弱い。本人がそれをどこまで自覚しているかは知らないが、とにかく僕の粘り勝ちだ。でも掴まれてる鼻が取れそうだから、次にお願いするのは暫く間を開けてからにしよう。3ヶ月、じゃ早い。半年くらいならギリかな。
「…はぁ…こんな事に時間使ってあほらしい…俺もう寝ます。あんたは床で寝てください」
「えっ、」
「落ちてるタオル片付けといてくださいね。布団に入ってきたら殴ります。おやすみなさい」
「えっ…」
 僕の粘り勝ち、の筈だけど恵の機嫌は直らなかったらしい。さっさと布団の中に戻っていった恵はそれきり僕の方を振り返ることなく眠り始めた。疲れていたから寝るまで5秒。
 あっという間に放置された僕は、そんなぁ、と呟いてぐちゃぐちゃのバスタオルを掴んでベッドルームを抜け出した。
畳む

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