薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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2025年2月22日の投稿1件]

子猫の甘噛み



 五条先生は俺の顔を触るのが好きだ。
 その中でも特に好きなのが頬。手慰みに意味もなく人の頬を撫でるし摘むし揉む。以前理由を聞いたら「やわらかいから」と答えられたことがあるが、自分で触ってみても小さい子供のような柔らかさは当然なくて首を傾げたものだった。しかし、任務終わりの迎えを待ってる間に次の資料に目を通しながら俺の頬を摘むだとか、何気ない会話の合間に意味もなく俺の頬を撫でるだとか、はたまた今みたいにベッドで人を抱き枕にして任務の報告書に目を通しながら俺の頬を揉みしだくだとか、五条先生の手慰みは俺の日常にすっかり溶け込んでいる。
 男ふたりで寝そべっても余裕のあるベッドの上で、五条先生に背後から抱き枕にされながら俺は先日買ったばかりの小説を読んでいた。向こうが人を抱き枕にするのなら、こっちも人を布団にしてもいいのだ。
 温かい身体に包まれて心地良さと僅かの眠気。頬に触れてくる手も温かくて、まだ文章は目で追えているし頭に入ってくるがそれもままならなくなるのも時間の問題。ぱらぱらとページを捲り、残り数ページで今読んでいる章が終わるのを確認する。ここまで読んだらこのまま寝てしまおう。

 やがてお互い会話もないまま時間が過ぎて、俺が読んでいた小説は一区切りを迎えた。そして、栞を挟んで五条先生の腕の中で小さく欠伸をした時だった。
「…ん、」
「あ、ごめん」
 五条先生の指先が唇を通り過ぎて歯に当たったのだ。頬を揉みながら気まぐれで唇を軽く摘まれたり撫でられたりということはあったが、流石に口内に入ってくるのは珍しい。変な意味を含まない、ただの偶然による指先の侵入。すぐに出ていこうとしたその指を、心地好い眠気に沈みかけていた俺は無意識に噛んでいた。
「…こら」
 噛むと言っても甘噛み。軽く歯を立てて唇で吸い付くような。五条先生に揉まれ続けてすっかり熱を持った頬と、眠るのに丁度いい人肌の布団。頭の中はさっきまで読んでいた本の文字がふわふわと浮いていてベッドメリーのようだった。
背後で五条先生の少し困ったような声がする。さっきまで報告書に向いていた意識が完全に俺に向いていて、ちうちうと吸いつかれている指先をどうしたものかと頭を悩ませていた。今日は俺も先生もそういうことをしたい気分ではなかったし、そもそも後ろの準備だってしていない。ただただ引っ付いてゆっくり過ごしたいだけ。
「ふふ、…」
「あっ、こら、寝るんじゃない」
 指を引き抜くことも動かすことも出来ない五条先生の声を子守唄に、とうとう俺は心地好い眠りの世界に旅立った。
畳む

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